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政令指定都市

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参考文献:
政令指定都市−百万都市から都構想へ 北村 亘著 中央新著−
をもとにしています。

かつて政令指定都市といえば、大阪や京都、横浜といった日本を代表する人口百万を超える大都市を意味した。しかし、市町村合併推進のため、従来のイメージからほど遠い都市が次々と移行、その数は20に達した。
札幌市、仙台市、新潟市、さいたま市、千葉市、川崎市、横浜市、相模原市、静岡市、浜松市、名古屋市、大阪市、京都市、岡山市、広島市、神戸市、堺市、北九州市、福岡市、熊本市だ。

政令指定都市は、通常の市とどう違うのか。それには、まず、市とはいったいどのような存在なのか。地方自治法では、「市となるべき普通地方公共団体」の要件を明示している。(地方自治法第8条)
@人口5万以上を有すること。
A当該普通地方公共団体の中心の市街地を形成している区域内に在る戸数が、全戸数の6割以上であること。
B商工業その他の都市的業態に従事する者及びその者と同一世帯に属する者の数が、全人口の6割以上であること。
C前各号に定めるものの外、当該都道府県の条例で定める都市的施設その他の都市としての要件を具えていること。

特例市になるには、人口20万人以上、
中核市になるには、人口30万人以上、
政令指定都市になるには、人口50万人以上が必要です。

政令指定都市は、「次に掲げる事務のうち都道府県が法律またはこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部」で「政令で定めるもの」を処理することができる。(地方自治法第252条の19)
として、
「保健衛生」「福祉」「教育」「環境」「まちづくり」「治安・安全・防災」の6領域で権限が委譲されている。

市長
市長は、市職員を指揮監督しながら、行政事務を管理し執行することが期待されている。日本の地方自治法には、市長の権限として議案提出権、予算の調整執行権、地方税などの賦課徴収権が概括的に列挙されている。(地方自治法第149条、第154条)
とくに重要な権限は、予算提出権と再議請求権、専決処分権である。
まず、市長のみが予算を提出する権限を有しており、議会は首長の権限を侵さない限りにおいてしか増額修正できない(地方自治法第211条、第97条)。とはいえ、議会の議決を経なければ予算は成立しないため、どの市長も職員も各議員の一挙一動に敏感である。
次に、再議請求権とは、議会の議決に対して市長が再議に付すことができる権限であり(地方自治法第176条)、大統領制における拒否権に相当する。議会は再議請求権に対して、出席議員の3分の2以上の議決で再議請求を破棄して確定させることができる。
しかし、議会内に首長を指示する勢力が3分の1以上の議席を占めているときには破棄できない。この点が首長と議会の関係を大きく左右している。(北村2002)
最後に専決処分権は、緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないときなどに、議会の議決が必要な事務を首長の権限で処分できるとする権限であり2010年の鹿児島県の阿久根市で大きな問題となったことでも知られている。一方で、2000年の三宅島の噴火のとき、三宅村では村議会を開くことができず補正予算の審議が不能であったため、村長は専決処分を行うことで避難した村民への行政サービスを維持したケースもある。

市職員
市長および市長が任命する副市長は特別職である。副市長は、市長によって任命され、議会の同意を得て就任することとされ、定数は条例で市ごとに定められている。政令指定都市最大の横浜市では平成25年4月1日現在3名の副市長が任命されている(定数条例では4人)。副市長の下に置かれている局長(部制の場合は部長)、あるいは行政区の区長たちが一般職の職員としてはトップである。政令指定都市には、ごみの収集を行う清掃職員や市民病院に勤務する医師など、多種多様な職員が勤務している。学歴も採用試験区分も様々である。政令指定都市に限らず、地方自治体の多くでは、試験区分と幹部職員への登用がリンクしているわけではない。国家公務員では、総合職という試験区分で採用された職員のみが幹部職員に登用される「入り口選抜方式」が採用されているのとは好対照である。とはいえ、「地方上級職」と称される大学卒業対象の事務職員が、局長や部長などの幹部職員に昇進していく可能性が高い。また、中央省庁の官僚が幹部職員に出向してくることも少なくない。

政令指定都市は人気?
どの組織であっても、優秀な人材のリクルートは重要である。46都道府県と20政令指定都市は同じ日に職員採用試験が行われる。そのため、道府県の職員採用試験を受験するか、あるいは政令指定都市の職員採用試験を受験するかということは、学生たちの人生にとって大きな選択である。特に、政令指定都市のある道府県では学生たちもうわさ話に翻弄される。大学生たちの「都市伝説」では、政令指定都市のほうが、採用試験の倍率は高く、採用試験での合格は難しいという。曰く、転勤の可能性がなく、大都市にとどまって勤務できるので仕事の後の娯楽などにも恵まれていることが政令指定都市の人気の理由であるという。また、政策の企画立案や計画調整にとどまる道府県とは異なり、実際に政策の実施まで市自らの権限で行うことができ、市内に関しては自己完結的な行政が可能となっていることも政令指定都市の魅力だという。他方で、まったく逆の「うわさ話」も時々耳にする。曰く、政令指定都市といっても、あくまで県内の基礎自治体のひとつであって完全に道府県の枠外ではないことや、大都市と大都市以外の地域の双方の行政や地域格差の是正に携われること、低負担・高サービスを求めて押しかけるうるさい住民に接することなく企画立案に特価できる点が道府県の醍醐味だという。

人事管理
市職員の給与と人事管理は、本来は密接に関係している。職員の給与を人件費削減の観点からのみ議論することが多いが、人事管理とあわせたきめ細やかな議論も必要である。
公務員の人事管理システムは、50代前後まで誰が幹部職員に登用されていくのか明らかにならない「遅い昇進」システムであるといわれている。(稲継1996)。特に政令指定都市の場合、区役所と市本庁との間を往復するごとに昇進していくパターンもあれば、区役所から市本庁に移った途端に総務や財政、企画部門を中心にして昇進するパターンもあり、一般職員が昇進階段を意識することが極めて困難である。とはいえ、政令指定都市の職員は定年まで勤務することが可能であり、昇進競争の敗者だからといって給与に大きなダメージを受けるわけではない。
とはいえ、幹部職員への登用は地方上級職員に限られていないから、採用後の昇進競争は激しくなる要素を秘めている。給与の一律削減ではなく、昇進コースや手続きを科しかして適切なインセンティブを提示できれば、人件費全体の削減を行っても、うまく職員の競争を刺激することは可能である。
 平均給料月額の議論を行う際には、きめ細やかな人事管理の議論とワンセットにしなければならない。バナナのたたき売り的な人件費削減競争は、中長期的には職員のモラール(士気)を下げ、その結果、モラル(道徳観)までさげてしまうかもしれない。職員の能力と適正を判断するためには、時間とコストを惜しんではならない。公平かつ透明な人事システムの構築こそが効率的かつ効果的な行政運営にとって重要である。

市議会
 市長や市職員とともに、市行政を担っているのが市議会である。地方自治体である議会は必置であり、その議員は住民によって直接選出される(憲法第93条、地方自治法第89条)。現行憲法の下では、道州制であろうが、都政であろうが、道府県から完全に独立した特別自治市であろうが、地方自治体である限り、首長と議会の議員をそれぞれ住民が直接選出する「二元代表制」をとることになっている。
 地方議会は、条例の制定や改廃、予算の議決、決算認定の議決などを行う(地方自治法第96条)。特に、条例の制定や改廃に関する議決事案を一号議案といい、予算については二号議案、決算については三号議案、地方税の賦課徴収や分担金、使用量、加入金、手数料の徴収については四号議案、契約の締結については五号議案と呼ばれることが多い。
 近年の地方政治研究は、それまでの研究が知事や市長、あるいは彼らが人事権を行使しうる首長部局に偏っていたことを指摘し、地方自治体内部の制作過程における地方議会の政治的重要性を指摘している。(北村2002,2004,辻2006,蘇我・侍鳥2007,馬渡2010,砂原2011)。首長部局のまとめた条例案や予算案などの可否は地方議会の議決によって最終的に決定されるという意味で、地方議会を「制度的拒否権プレイヤー」と位置づけている。

議員数と報酬
 20政令指定都市の議会の定数を見ると、熊本をのぞき、軒並み50名を超えている(図表4−9参照)。市議会の選挙制度は行政区を単位として、そこから複数の議員が選出される。「中選挙区」制度である。
 政令指定都市の議会の議員数は多いとしばしば批判される。しかし、本当に多いのかどうか判断するためには、「人口千人あたりの議員数」と「目的別歳出にしめる議会費の割合」で考えることが重要である。実は、横浜市議会(84議席)でも、人口千人あたりの議員数を考えると、わずか0.023人でしかない。日本の地方自治は、英国やフランスなどと比べると活動料が圧倒的に大きいにもかかわらず、その条例案や予算案を審議している議員数は著しく少ない。その中でも、旧五大都市での人口千人あたりの議員数は、見かけの議員定数が多い一方で、概して少ないのである。
 また、目的別歳出に占める議会費の割合についても、0.2%から0.4%の間である。不適切な活動に貴重な税金がしようされるのは論外であるが、市議会がしっかりと機能しているのであれば、大きな支出とは言えない。地方自治の充実という観点からすれば、議員数の増加という選択をしてもおかしくないとすら言える。
 議員報酬について見てみよう。2011年4月1日時点で、市議会議長の最高額は117万9000円(以下、月額)、最低額は77万8000円となっている。副議長の最高額は106万1000円、最低額は70万円となっている。それ以外の市議会議員の場合、報酬の最高額は95万3000円、最低額は64万8000円となっている。政治的代表制を高めるために議員数を増加させたり、立法調査に関する関する予算を拡充させたりする場合、議会費全体をいってい一定としたうえで、一人あたりの報酬を削減することもありえるかもしれない。また、報酬を削減あるいは廃止するのであれば、権限と仕事量も大幅に削減する必要が出てくるだろう。膨大な予算規模と条例案を扱う市議会として、求められる政策調査や立案活動の程度を明らかにする必要がある。極論だが、日当制を導入するのであれば、日当で活動できる程度の議会でなければならないだろう。

市長のラバースタンプか
 政令指定都市の限らず、地方自治体での政策決定過程では、多くの場合、市長部局が作成した予算案や条例案を市長が市議会に提出し、しぎかいが判断を下すという流れになる。たとえば三重県議会のように、議会自らがイニシアティブを発揮して条例案を制定する例もあるが、政策情報および専門知識が体系的に蓄積されている首長部局が政策形成でのイニシアティブをとるのが通例である。いずれにしても重要なことは、専決処分という例外を除くと議会の議決が決定的な意味をもっているということである。
 議会が首長提案を過半数の反対で否決したとしても、再議決には3分の2以上の議員の合意が必要となる。そのため、結果として、首長の政策選好に近い3分の1の議員たちに寄った立場でしか、再議決による修正は困難である。
 本来、議会は、様々な政策選好を持つ議員からなるため、3分の2以上の議員が合意形成を行うことのハードルは高い。首長からすれば、議会内に3分の1以上の議員を支持勢力として最低限確保すれば、再議決による合意点は自らの政策選好の位置に限りなく近いところになる。それゆえ、首長と議会は、多くの地方政治研究が論じるほど対立的な関係になることはなく、議会も一定のルールの下で戦略的に行動した結果、首長提案を可決しているといえる。






岡本治郎

プロフィール

青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻修了。修士(ビジネスロー)。

日本銀行・金融広報中央委員会の平成20年度通信講座「くらしに身近な金融講座」の改訂を依頼される。

会社役員。


資格など

日本証券業協会会員
内部管理責任者資格。

実用英語技能検定準一級。

趣味は、サイクリング。ギター。


テクノロジー犯罪の解決は
あらゆる政治課題解決の
糸口となる
---参考資料---

マトリックス解読

マトリックス解読(英語)

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