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経済刑法
よくわかる刑法[第二版]、新経済刑法入門[第二版]を参考にしています。 |
刑法の目的と機能
@刑法は何のためにあるのか?:刑法の目的
刑法の目的とは何か?この問いに答える前に、そもそも法の目的について考えてみたい。これは一言で言えば、個々人の行為を法という一定のルールによって規制することによって、自由な共同生活を保障する形で社会秩序を維持することに他ならない。そして、法治国家においては、制定法が行為を規制するルールとなり、社会秩序が維持される。刑法も一つの法である限り、やはりその目的は社会秩序の維持である。しかし、民法のような他の法規範とは大きく異なり、刑罰という厳しい制裁手段を通じて社会秩序の維持を図るところに刑法の特徴がある。つまり極めて重大な事態である犯罪に対して、刑罰という厳しい制裁手段で臨み、社会秩序を維持することが刑法に固有の目的なのである。刑法は、このような形で社会秩序の維持という目的を達成するために、いくつかの機能を発揮する。ここでは、規制的機能、法益保護機能、人権保障機能の三つが刑法の社会的機能として重要である。
Aまず、刑法は、一定の行為を犯罪とし、これに一定の刑罰を結びつけて、その行為が法的に許されないことを規範的に明示し、国民の行動をコントロールする規制的機能を発揮する。そもそも法とは、一定の公のルールによって個々人の行動を統制し、社会秩序の維持、調和を図るものである。刑法も法の一種として、まずはあるべき公の行動基準を、どのような行為が犯罪とされて、刑罰という制裁を受けるのかという形で示して、国民が犯罪を犯さないようにその行動を規制し、社会秩序の維持を図らなければならない。
B刑法の法益保護機能
次に重要なのが、法益保護機能である。刑法の目的が社会秩序の維持であるとしても、刑罰という重い制裁手段を用いて一定の倫理や道徳を守りながら社会秩序を維持することまでは要請されるべきではない。あくまで、刑法が目指すべきなのは、法によって守られるべき利益である法益の保護を通じた社会秩序の維持でしかない(法益保護主義)。日本国憲法は、個人主義を基調とし、個々人が多様な価値観をもつことを許容している。これは、他人の法益を侵害しない限り、独自の道徳観や倫理観をもつことを認めることを意味する。つまり、国家が刑罰によって一定の道徳国民に押しつけることは、不当なことであり、刑法は、あくまで法益保護機能を通じて社会秩序の維持を図らなければならない。殺人罪が処罰されるのも、それが道徳的に正しくないからではない。あくまでも「人の生命」という個人の法益を守るためである。
法益
法益とは、法の保護にあたいする。人間の共同生活にとって不可欠の利益のことである。法益には生命・身体・自由・名誉・財産などの個人的法益、公共の安全・信用などの社会的法益、国家の立法・司法・行政作用などの国家的法益の三種類がある。個人主義を基調とする日本国憲法の下での法秩序においては、個人的法益が優先的に保護されなければならない。(よくわかる刑法 4頁−5頁)
特別背任罪
趣旨:会社法960条以下の規定する特別背任罪は、会社の役員等が、自己もしくは第三者の利益を図り、または会社を害する目的を持って、会社との信任関係に違背して、会社に財産上の損害を与える罪である。特別背任罪は、刑法247条の背任罪の加重類型であり、会社の役員等の身分を有する者についてのみ成立する身分犯である。1997年の改正で、法廷刑の上限が「7年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科」から「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はこれらの併科」に引き上げられ、現在の会社法960条に引き継がれた。(新経済刑法入門[第二版]169頁−170頁)
特別背任罪におけるその具体例は、不正融資、粉飾決算、リベート、贈賄、愛人への利益供与などである。(新経済刑法入門[第二版]171頁)
背任罪ないし特別背任罪に関しては、取引の相手方も取締役などの背任行為に積極的に加担した場合には、これらの罪の共犯となりうる。しかしながら、取引の相手方は利害関係を異にするのであるから、取締役等の任務違背につき未必的な予見をもちつつ少々の無理を要求した場合にまで本罪の共犯を認めるのは妥当ではない。したがって、判例は、このような共犯者に関しては、任務を有する者が抱いた任務違背の認識と同程度の任務違背の認識が必要と解し、また、相手会社に財産上の損害が生じることについての高度の認識と当該取引に応じざるを得ない状況にあることを利用しつつ加担したと行った事情がある場合にのみ、共犯を認めている。反対に、その要請・働きかけが著しく相当性を欠き、協会役員らに背任行為を強いる危険が高いなど、経済取引上の交渉事として社会的に容認される限度を超えない限り、本罪の共犯は否定される。
政治資金・選挙資金の規制
寄付の制限:会社は、政党および政治資金団体に対してのみ寄附をすることができ、それ以外の政治団体および政治家個人に対する団体からの寄附は禁止される。(新経済刑法入門[第二版]329頁)
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岡本治郎 |
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プロフィール |
青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻修了。修士(ビジネスロー)。
日本銀行・金融広報中央委員会の平成20年度通信講座「くらしに身近な金融講座」の改訂を依頼される。
会社役員。
資格など
日本証券業協会会員
内部管理責任者資格。
実用英語技能検定準一級。
趣味は、サイクリング。ギター。
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テクノロジー犯罪の解決は
あらゆる政治課題解決の
糸口となる
---参考資料--- |
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