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データサイエンス
『偶然と必然の方程式−仕事に役立つデータサイエンス』マイケル・J・モーブッシン著より。()のページ数は同書より。 |
繰り返しになるが、その活動に運が大きく関与しているときは、実力が支配的であるときより、大きなサンプルが必要になる。(171頁)
投資−過去の実績は将来を保証するものではない
投資の世界には、抜け目がなく、意欲にあふれた機関投資家が数多く存在する。すでに見たように、この業界は競争が激しく、平均への回帰が強く働く。(180頁)
投資の短期間の成績は運に大きく左右されるため、短期における損益に実力が反映されるわけではない。とはいえ、我々は目の前で起こっていることの原因を安易に知りたいと思うので、「儲かった」という事実を短絡的にファンド・マネージャーの手腕に結びつけてしまう。投資の世界では、こうした錯覚が高くつくのだ。(181頁)
運の影響がより大きな活動では、少なくとも短期間のうちに正確なフィードバックを受けることが難しい。行動がそのまま結果に結びつかないからだ。そうした活動では、結果よりもプロセスに意識を集中することが重要になる。ポーカーを練習して、実力が向上したとしても、いつも勝てるようにはならない。ポーカーの勝ち負けはかなりの程度、運に左右されるからだ。それでも専門能力を身につけると、長期間での勝率は高くなる。
意図的な訓練−構造、努力、フィードバック
カーネマンは、二つの意志決定のシステムを提案している。”システム1”は経験的なシステムで、「自動的に迅速に働き、ほとんど努力は不要で、自発的に制御しているという感覚を伴わない」。”システム2”は分析的なシステムで、「複雑な計算のような骨の折れる精神的な活動に意識を集中させる」。(192頁)
意図的な訓練でシステム1を鍛えることによって、専門家になれる。専門家になると、無意識に行動し、意識をより高いレベルの思考に振り向けられるようになる。そのため、チェスの名人は盤上の駒の配置と優劣の状況を苦もなく把握できるし、テニスのトッププレイヤーは何も考えなくてもボールを打ち返すことができる。注意深い指導のもとで厳しい訓練を重ねた専門家は、パターンを自動的に認識し、敏速に問題を解き、適格に行動する。そんなとき、初心者はまだシステム2を用いて状況を分析しようとしているだろう。(193頁)
システム1を鍛えても、価格を確実に予測できるようにはならない。意図的な訓練は、チェスや音楽、スポーツでは効果的だが、適用範囲は限られている。ベストセラーの中には、意図的な訓練を推奨するハウツー本も少なくないが、たいていは、そうした訓練が役に立たない場合を区別していない。(194頁)
成功は、絶え間ない訓練と、少しばかりの才能が結びついた結果である。システム1を鍛えて、専門能力を高めることこそが、成功への道なのだ。(198頁)
成功が確率的であるときはプロセスを重視する
ブラックジャックのように運が大きな影響をおよぼす活動では、信頼できるプロセスを採用することが重要だ。一回ごと、あるいは一晩ごとの勝負の結果に一喜一憂してもあまり意味がない。正しいプロセスに忠実に従って、長期間にわたってプレイを続けることこそが勝利への道なのだ。実力があっても、目先の勝ち負けをどうすることもできない。実力は、正しいプロセスを続けるためにのみ必要なのだ。(206頁)
優れたプロセスの二つ目の要素は、心理学に関係する。カーネマンとトヴェルスキーのバイアスに関する研究が参考になる。バイアスにはいくつかの種類があり、自信過剰、アンカリング、確証バイアス、最近のことに頼る傾向などが含まれる。これらのバイアスは自動的に生じるので克服するのが難しいことを、二人は強調している。(210頁)
クラーマンは、大衆に逆らうことの重要性を説く。我々は孤独になるより大衆の一部でいたほうが、快適でいられる。しかし、ほかのみんなと同じことをしていたら、抜きんでるのは難しい。 熟練した投資家は、ベンジャミン・グレアムの次の言葉を心に留めている。「自分の知識と経験に自信を持て。事実から結論を導いたのなら、そして、自分の判断が正しいと確信できるなら、それに従って行動せよ−たとえ他人とは違う道を進むことになろうとも」。 もっとも、世論が正しいこともあるので、逆張りだけでは成功しないと、クラーマンは的確に指摘している。逆張りを基本戦略としつつも、計算機の助けを借りて「安全域」を確保する冷静さを失ってはいけないのだ。(212頁)
状況に手法を合わせる
実力を向上させられるかどうかは、その活動が「運−実力連続体」のどこに位置するかに依存する。はっきりした因果関係が存在し、安定した線形の活動なら、”意図的な訓練”こそが実力を高める唯一の道だ。”システム1”を鍛え、専門能力を高めれば、直感が確実に発達し、自動的でスムーズな意志決定がたやすくなる。一定の課題を正確に、同じように実行する必要があるときには、チェックリスト(ドゥー&コンファーム・チェックリスト)が役に立つ。異常事態が発生したときにも、チェックリスト(リード&ドゥー・チェックリスト)が冷静な意志決定の助けになる。連続体の右端に位置する活動において実力の向上を目指すとき、自分の行動がただしいかどうかを的確に判断し、それをフィードバックとして行動を修正する作業が重要になる。
活動に運が関与している場合、短期間の成否から実力を判断するのは難しい。すべてを正しくおこなっても失敗することがあるし、すべてを間違っておこなっても成功することがあるからだ。連続体の左端に位置する活動では、正しいプロセスを用いることが、長期にわたる成功への近道になる。
連続対のどこに位置していようと、正確なフィードバックは欠かせない。実力を向上させることは、間違っている行動を修正し、わずかでも正しい行動に近づけるという点で、自分の行動を変えることを意味する。このことは、バスケットボール選手、医師、企業経営者、投資家のいずれにも当てはまる。(215頁)
運とともに生きることを学ぶ
誰もコントロールできないもの−それが運の定義だ。(239頁)
平均への回帰を見方にする(241頁)
本章の要点は、自分が「運−実力連続体」のどこに位置しているかを慎重に判断し、適切な縮小係数(c)を推計し、平均への回帰を意志決定に組み込むことが、効果的な予測につながるというものだ。その際に便利なのが、****という単純な数式だ。これは、縮小係数(c)と相関係数(r)がほぼ等しいことを意味し、考え方の基本的なフレームを与えてくれる。(259頁)
過去の金融危機のほとんどは、このブラック・スワンの世界−非常にまれな確率で極端な結果が起きる世界−に、不適切な統計的手法を不用意に適用した結果だ。
実力と運を区別する目的は、上手に推測する技術を高めることだ。人生のあらゆる事象は、実力と運の組み合わせで決まる−。このことは誰もが認めているが、ある目的を達成するうえで、実力と運のどちらがどの程度大きな役割を担っているかを、正しく理解している人はほとんどいない。本書の目的は、実力と運についての理解を深め、この二つを区別する分析的手法を提示することだ。それにより、読者の推測の技術が少しでも向上するなら、それにまさる喜びはない。(286頁)
リンク
政府統計の総合窓口
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do
この”e-Stat"ではどうしても見つからない場合には、総務省統計局の統計図書館に相談窓口があります。来館しての相談を受けることはもとより、電話またはメールでも尋ねることができます。詳細は統計局のホームページをごらんください。ネットの検索サイトから「統計相談」と入力して検索すると、該当するページがすぐに見つかります。(『数字を追うな 統計を読め−データを読み解く力をつける』佐藤朋彦著203頁
リンク
データカタログサイト
http://www.data.go.jp/
各府省の保有データをオープンデータとして利用できる場をつくり、データの提供側・利用者側双方にオープンデータのイメージをわかりやすく示すことを目的としている。
登録しているデータは、「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ」において重点分やとされた白書、防災・減災情報、地理空間情報、人の移動に関する情報、予算・決算・調達情報を中心に登録されている。
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岡本治郎 |
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プロフィール |
青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻修了。修士(ビジネスロー)。
日本銀行・金融広報中央委員会の平成20年度通信講座「くらしに身近な金融講座」の改訂を依頼される。
会社役員。
資格など
日本証券業協会会員
内部管理責任者資格。
実用英語技能検定準一級。
趣味は、サイクリング。ギター。
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テクノロジー犯罪の解決は
あらゆる政治課題解決の
糸口となる
---参考資料--- |
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