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地方自治
シリーズ地方自治の諸問題−@ゴミ処理問題


なぜゴミを削減するのか
 ゴミの削減は、大きな意味では地球環境のため、というのはたしかですが、もっと切実で身近な問題を含んでいます。
 まず、千葉市としてはごみ処理全体のコストを削減して税金を浮かせたい。こう言うと「結局は財政の問題か」と思われるでしょう。その通りです。ごみ処理コストが安くなれば、その分、市民に別の形でお返しをすることができるからです。千葉市だけで年間100億円以上がごみの処理にあてられています。(『公務員ってなんだ?−最年少市長が見た地方行政の真実』2012年・熊谷俊人著・164頁)

鎌倉市で、ごみの有料化と戸別収集(一戸建てのお宅のお庭までわざわざごみを取りに来てくれる)を実施しよとしていることについて、2013年秋に「鎌倉からごみを考える会」のアンケートに答えた主筆の考え方は以下の通りです。

Q1 戸別収集は必要と考えるか
不要:(理由)戸別収集の実施目的は、排出者責任による減量効果と市民サービスの向上ということだが、減量効果については、同時に行おうとしている事業系ごみ処理にかかる手数料の改定により事業者が家庭ゴミにまぜて違法排出することの抑制効果も加味せねばならないので、単純に家庭ゴミだけの減量効果ではかれない面もあるが費用対効果の観点から疑問。市民サービスの向上については、一部の一戸建て世帯の特殊な要望を聞くための優遇政策に思われる。また戸別収集といっても、重い資源ごみはあいかわらずステーションまでもっていくという原案は、5億円ものコストをかけて行う政策として何をめざしているのか疑問だ。ステーションのままでやってくださいとの市民の声が多くあると聞く。一部の鎌倉に古くから住む世帯への優遇、こびをうる政策と思える。そもそもステーションまでもっていくのが大変だという原案の政策対象と思われる立派な家が多く存在する市内の歴史的風土保存地区の面積は市全体の面積の24.8%にあたる約989ha(東京ドーム210個分)あるが固定資産税は鎌倉市市税条例により免除されている。さらに相続税の評価や、県による土地の買い入れがなされた場合、譲渡所得には2000万円の控除が適用されるという優遇がある。鎌倉市は歴史的風土特別保存地区等と同様に緑地保全地区についても固定資産税を免除する条例を平成14年に可決している。これらの条例は優遇政策にすぎる。たとえば横浜市の緑地保存地区のように所有者が集合住宅の土地所有者の代表者によるもの、固定資産税の課税地目が山林課税以外の土地であるものについては、減免ではなく奨励金措置にするなど、税制度本来の原則を踏まえ、公正に配慮する必要があると考える。個人市民税がその大半を占める鎌倉市は大規模団地ができたことによって財政がうるおった。昔からある商店街より団地の一角ではらってくれる税金の方がはるかに多い。市民全体の公平さがそこなわれている現状を是正する方向を模索しなければならない。しかるに9月から鎌倉市が10%を援助している商品券にしろ、これまでの施策は、莫大な税を一部の昔から鎌倉にいる層に使い続けてきた。全体をみるバランス感覚に欠けているといわざるをえない。

Q2 これまで鎌倉市は、ごみ減量のための政策は失敗してきたが、今回については有料化すればごみが減ると考えるか?
一時的には、あるいは幾分は減ると考えるが、平成27年にせまる今泉クリーンセンター閉鎖分の8000トンの削減とはならないと考える。鎌倉市は分別資源化率全国ナンバー2である。民度の高い市民の環境意識は高い。だれも好きこのんでゴミをだすわけではない。家庭ゴミはやむなく排出するものである。市民は十分がんばっている。これ以上の削減はしれている。
問題は、市民ではなく行政にある。そもそも市内で出るゴミは市内で処理しなくてはならない。それが市の仕事である。財政が厳しいから処理施設がまにあわなかったは「いいわけ」にならない。職員の給与水準が高すぎるので、本来やらなければならない仕事にまわすお金が足りなくなるのだ。職員は過剰にいるのだから、外注するかわりに、資源回収業務改善部(仮称)を新設し、部長以下職員が自ら回収業務にたずさわり、どうすればごみの減量ができるのか、効率よく仕事ができるのか、自ら経験して、改善の方法をみなで意見を出し合う必要がある。全職員に研修として、新設の資源回収業務改善部もしくは総務部しごと改革推進課(仮称)での体験、そしてレポートを義務づけてもよい。答えは現場にある。現場主義を徹底する。市長自ら、現場にでて、率先することもいとわない。部下は、上司の背中をみて、やる気をおこすものだ。そして、市長自らがごみの回収に汗を流している姿をみて、市民も答えてくれるだろう。ムチである有料化よりも市民の自発的な協働意識を高めることがゴミ減量のポイントだ。鎌倉市民の協力意識を生かせない行政に、役所に問題があると考える。

Q4 Q2で「考えない」と答えた方、理由は?また、有料化に代わる案としてどのような政策を考えているか? 
全体の構想、将来のビジョンを先に示してからの有料化ならまだしも、将来の構想も示さず、いきあたりばったりの有料化には、前述したように市政の失策をとがめられるだけで、市民の理解は得られないのではないか。
有料化の料金が高ければ高いほど、ごみの減量効果は高まるだろう。とはいえ、ピグー税的なもしくはボーモル・オーツ税的な施策をする前にやることはあるだろう。啓発効果については、一時的な効果はあっても、数年経つと元に戻ってしまう、いわゆるリバウンド効果もよくいわれる。
有料化の減量効果を否定するわけではないが、抜本的かつ効果的な政策が必要である。鎌倉市の家庭の燃やすゴミの47%、事業者のもえるごみの62%を占める生ゴミを分別化すればゴミの半減化はできる。そこで平成21年11月に就任した市長が凍結した山崎浄化センターバイオマスエネルギー回収施設について、建設の方向ですすめるのがよいと思う。30年間で98億もしくは65億、つまり年間にすると3億2666万もしくは2億1666万円のコスト高となるので廃案となったようだが、大田区のバイオエナジー株式会社のように民間で生ゴミをエネルギーに変えて事業化に成功している会社もある。自治体としてバイオマス施設を経営すれば、ゴミの回収には困らないので、民間よりも経営環境はよいのである。あるいは、市としてバイオマス施設の多角的な経営をすすめるために、市内の市所有の遊休地でヘンプの栽培をして、バイオエタノールの原資とするという案も検討したい。ヘンプ(産業用大麻)は、農薬や化学肥料を必要とせず約100日で生育し赤松と比べると3倍の酸素を出す。やせた土地でも栽培でき、土の中の重金属などの有害物質を成長過程で光合成で無毒化する。作付け面積に比べ収穫が多く、マイナスイオン効果、殺菌効果、種子は食用(七味唐辛子)になる。なにより日本古来よりの文化性のある植物である。まさに古都・鎌倉にぴったりだ。特区申請も検討する。現在5つほどの自治体で栽培されているようである。茎に含まれるセルロースからエタノールが作れる。それ以外の部分も、すべて利用可能で、衣服、紙、化粧品・生活用品、住宅用建材、プラスチックと産業振興が大いに期待できる。実際、鎌倉市内では、ヘンプのジェラードやケーキを出すカフェ・レストランもありにぎわっている。ヘンプによりバイオマス施設の稼働率はあがり、市の収入となるばかりではなく、市全体に大きな経済効果をもたらすことが期待できる。欠点は、産業用大麻ということで勘違いされやすいということぐらいだろう。さまざまな可能性を追求し、ゴミ問題だけを見るのではなく、鎌倉市全体として、市民の幸福度を向上させる施策を検討していきたい。それぞれの部署の部長、つまり官僚にまかせていたのでは、木を見て森を見ないような部分最適解の政策しかでてこない。全体俯瞰的な、つまり木を見て森も見る政策を実行するのが市長の仕事だと思う。

Q5 全家庭一律の有料化、およびすべての燃やすゴミと燃えないごみを有料化することは適切だと考えるか。
適切ではない:一律の有料化は適切ではないと考えるし、実際、鎌倉市では、特別児童手当、障害者福祉、生活保護世帯には、年間4800円相当の減免袋を支給する予定と聞いている。しかし、それだけでバランスが調整されるだろうか。近隣の市と比べても特に優遇されている前述の集合住宅所有者の固定資産税の免除とのかねあい、金持ちへの優遇政策がすぎる現状とのバランスを考えなくてはならない。神奈川県でも高い部類にはいる個人住民税を支払って、鎌倉市を支えてくれている大型集合住宅の住人たちは、政治的にはサイレントマジョリティであるが、公平さに欠ける政策に虐げられている、搾取されているという感覚をもっているのではないだろうか。市民が公平に幸福度を向上させる政策の恩恵に浴すことができるような、つまり、政策を実行する前に、トップの価値観、政治哲学が問われている。歴代の市政が、官僚主導で、部分だけを見て、声の大きなものの要望を聞く政策を実行してきたので、全体としてみると、不公平な社会、不満の多い社会となっているのだ。


Q6 有料ごみ袋の値段の根拠をご存じか?
知っている:鎌倉市では、現在ゴミ処理に一キロあたり66.8円かかっていて、その四分の一程度ということできまったと深沢クリーンセンターの職員は言っている。
私が調べたところ、たとえば現在、名超の耐震工事期間中で大和市と高座清掃協会にゴミ処理を委託しているが、それぞれ、1トンあたり、22000円と25000円である。1キロにすると22円と25円だ。また、県が把握している処理コストは1トンあたり
鎌倉市 47881円 逗子市 46238円 茅ヶ崎市 39548円
横浜市 35620円 三浦市 43700円 川崎市 32564円
葉山町 65096円 横須賀市 49991円 湯河原町 25193円
清川村 61951円 大和市 40673円
(以上、収集、中間処理、最終処理までを含む。)
との数字がでている。横浜のような住宅密集地域で、かつ人口が多い市でコストが安いのはわかるが、湯河原町のような過疎地域でも低コストで処理できている。つまり、工夫次第、職員の意識や、市長の戦略で、湯河原町のように低コストは実現できる。仮に、湯河原町ほどのコストで実現できるとしたら、設定料金は半分以下にできるわけだ。この件をみても、そもそも、行政の仕事のやり方がまずいから、市民にしわ寄せをしようとしていることがみてとれる。民間だと悪いサービス、悪い仕事だとその会社の商品やサービスを購入しなければよいわけであるが、市のサービスとなると、引っ越しするしかない。足による投票である。しかし、鎌倉程度の小さな市であれば市長が、トップがかわれば、市民の暮らしはがらりとかわる。市職員の出した価格の根拠は、処理コストの四分の一程度を負担してもらうということだが、実際は、隣接する市とあわせたといったところだろう。別の職員はそう発言していた。また平成25年9月6日の市議会における一般質問に答える形で、石井環境部長も、同様の発言をしている。いかにも公務員的だ。市職員の給与カットをしようとしても、隣接する市の職員はそこまで削減されていないぞと公務員らしい反発が予想される。山崎浄化センターバイオマスエネルギー回収施設の凍結理由だって、本当は、公債費負担比率が上がり、他の自治体と借金を比較され、公務員に対する給与削減圧力がかかるのをふせぎたいといった理由かもしれない。しかし、本来、ゴミ処理は市がやらなくてはならない仕事なわけだ。安定した処理が、仕事ができないのなら、これが民間だと、お客からは総スカンだ。数字は、見せたい結果次第で操作できる。平成21年3月に出された「鎌倉市事業系生ゴミ等分別収集モニタリング調査分析等結果報告書」と、翌平成22年11月に出された「山崎浄化センターバイオマスエネルギー回収施設整備に代わる、ごみ焼却量削減策等検討結果」とは、わずか1年半の差だが、同じ鎌倉市の状況を扱っているのに、もっていく結論が違うとこうも説得力をもって数字を見せることができるのだ。

Q7 有料化で得られた収入の使い道をご存じか?
知っている。:市に聞くとまだ決まっていない、検討中とのこと。また別の職員は、たぶんゴミ関係だと思うのですがとのこと。お金に色はついていないので、どうとでも言えるのだが、今回は戸別収集有料化とセットで行うので、普通に考えると5億集めて5億使うのかなぁと思ってしまう。しかし、本来、戸別収集をすることと、有料化は、まったく別のものだ。もしそれがリンクしているとしたら、全体的に不公平な政策といえよう。有料化に関しては、失策の尻ぬぐいをさせられる市民はたまったものでない。これまで市民は一生懸命に分別してきた。問題は行政の方にある。有料化をするより、やらなくてはいけないのは、職員の給与カット、行財政改革だ。その前に、まずは職員の意識改革からだ。市長に哲学がないから、まだわからないといった回答が出るのだ。職員の人事制度改革、市民の幸福度向上への貢献を人事評価の軸に据え、幸福度向上で市政を律して、企業経営の手法を、行政にももちこめば、末端の職員レベルでも、この質問に答えられるような市になるだろう。

Q8 もし市長になったら、ごみの戸別収集・有料化の政策を推し進めるか?市民に是非を問うか?
是非を問う。
私自身、現在、鎌倉市長選に立候補を検討しているにすぎない。もしも私が出馬することになれば、政策そのものの是非が問われるといえなくもない。私の政策の中心には、鎌倉市独自の幸福度指標を経営の中心にそえ、市民の幸福度を追求する市政運営、職員の人事評価の軸に市民の幸福度向上への貢献をもって加算給で評価するという人事制度改革をすえるつもりだ。地盤もない、選挙の経験もない新人候補である私が、市長になることは百に一つもないかもしれない。私が、勝つとしたら、市民から熱烈に請われて出馬する場合だけであろう。市民が「うん、この市長なら、協力する、力を貸す。」という選挙後の協働作業の最初の一歩が、投票であるにすぎない。
ちなみに、私がもし鎌倉市長選挙に立候補する場合、そのアジェンダは
一、 幸福度指数の導入
二、 市長給与、議員報酬3割カット、職員給与2割カット(年間20億円削減)
三、 フューチャーセッションの開催
四、 公正・透明・説明責任・情報公開
五、 政治は芸術だ

詳しくは、割愛するが、アジェンダや今回お話した特区申請といった政策も相手があるものであり、許認可がおりなければ、政策を変更せざるをえず、その際は、ゴミ削減のために、やむなく、有料化を検討せざるをえなくなる場面もでてくるかもしれない。
環境や事情は変化する。ビジネススクールでも、しっかりと計画をたてて、計画通りに実行するという従来の手法は、今日の変化の激しい複雑な環境下では不適切で、今やデザインスクール、デザイン思考の時代となりつつある。イメージはあるのだが、芸術作品を制作するように、試行錯誤をしながら、手直ししつつ、まるでアート作品をつくるように仕上げていく方法だ。
「政治は芸術だ。」というのは、このようなデザイン思考を含め、戦略は大胆にアーティスティックに、福祉は精緻にもれなくサイエンティフィックに。サイエンスとアートの融合をアカデミックな知性で実現することを意味している。
一人の英雄的市長がでることで、くらしがここまで変わるということを全国に示し、そして、その成功は、借金まみれの日本国全体を救うモデルとなることであろう。

------------- 岡本 治郎 -------------------------------------------------------------------
慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科付属システムデザインマネジメント研究所 研究員。
作家。会社役員。日吉経済新聞主筆。
青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻修了。修士(ビジネスロー)
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岡本治郎

プロフィール

青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻修了。修士(ビジネスロー)。

日本銀行・金融広報中央委員会の平成20年度通信講座「くらしに身近な金融講座」の改訂を依頼される。

会社役員。


資格など

日本証券業協会会員
内部管理責任者資格。

実用英語技能検定準一級。

趣味は、サイクリング。ギター。


政治は芸術だ
---参考資料---

自治体職員平均給与月額番付

自治体の公債費負担率

フューチャーセンターとは

川崎市会議員の報酬

市区町村長の給料

ポストシステム思考

幸福の定量化



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