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リスク学事始め
人生のリスクをマネジメント

リアルオプション Real Option

リアルオプションとは、オプション投資の意思決定の際の価値評価の考え方をを経営の意志決定の際に利用するもので、MITスローン校のスチュワート・C・マイヤーズ(Stewart C. Myers)教授が、「Determinants of Corporate Borrowing」(Journal of Financial Economics 5, No. 2, 1977)で最初に使った。リアルオプション(Real Option)とは、金融工学のオプション理論を実物資産やプロジェクトの評価に適用した考え方で、不確実性の高い事業環境下での経営上の意志決定選択権を意味する。経営資源配分、投資の意思決定にあたり、その選択権の価値も含めて判断を行う。1980年半ばごろから、米国で戦略的投資評価に対するリアルオプション・アプローチの研究が本格化し、1990年代から石油・鉱業や医薬品などの産業で利用されるようになってきた。


意思決定の選択権を定量評価
 旧来型の投資判断方法は、投資したら後戻りできないことが大前提であった。しかし、実際の投資局面では、環境がより明らかになった時点で「工場を増設する」とか「プロジェクトを中止する」といった、プロジェクトが持つ意思決定のオプション(選択権)がある。そのオプションを価値として定量評価しようとするのがリアルオプションだ。
 例えば、将来のリスクが大きすぎて、従来の投資判断方法の1つであるNPV(正味現在価値)法で計算するとマイナスになる場合でも、リアルオプションも加味して評価すると、将来の投資機会に対するオプションの要素も評価されるためプラス値になり、投資すべきだという判断になることがある。
 このような戦略投資におけるオプションとしては、下表のような種類があげられる。


意志決定における選択肢(オプション)の種類
オプションの種類 価値の内容 適用側面(例)
延期オプション 環境の好転や意志決定材料の登場まで、意志決定を保留できる−待ってから決められる価値 様子見
段階(分割)オプション 一括投資するのではなく、段階的に意志決定ができ、状況に応じて玉のサイズをコントロールできる−段階的に次への進退を決められる価値 玉を分割する。少しづつ建てる。
撤退オプション 損切り、手じまい、撤退する自由や権利があり、オプションであれば残存価値を受け取れる−どうにもわからない環境下で撤退できる価値 損切り
柔軟性(スィッチング)オプション 環境変化に対して、オプションや先物を使うといった柔軟に武器を変更できる−環境に応じた柔軟性の価値 オプションか先物か。
成長オプション ある玉が、アウトライトの玉からヘッジの玉、ツナギの玉、またアウトライトの玉と変化する。初期の建て玉が、将来の別の利益機会につながっているなど、将来の利益機会への足場を築ける価値 玉の性質は変化する


意志決定は、サイエンスではなくアート。
 ただし、この手法も、金融理論の実務面への適用の困難さや、複雑な数理計算をともなうために、経営者の理解を得がたいという課題がある。しかし、複数の戦略シナリオの価値を数値化することで、不透明な将来に対する価値の社内共有や投資判断、リスクヘッジ、そして取引条件の設定に資することが可能になる。
 実際のオプショントレードで、ブラックショールズ式の計算など意味がないように、リアルオプションの意志決定でも、精緻な計算までは不要。しかし考え方は使える。



「リスク」はそれまで神が定める宿命として受容していた人生の浮き沈みを、いちかばちかの「ギャンブル」へと変えたのである(Bernstein,1996)。したがって「リスク」(危機)に対立する語は「好機」(time)であり、人生において「自由」を求める限り「リスク」は不可避的にともなうものである。
 しかし、人生がギャンブルになったからといって、その社会が「リスク社会」であるとはいえない。ギャンブルにおいては「リスク」と「好機」は同一のコインの裏表であり、人生においても「リスク」と「好機」のバランスがとれている限り「リスク社会」とはいえない。「リスク社会」とは、人々がギャンブルとしての人生を強いられ、しかも、その「好機」によって幸福になるよりも「リスク」によって不幸になる確率が高く、その不幸の責任を当事者に帰属させることが出来ない社会である。
 「リスク」および「リスク社会」をこのように定義するならば、現代日本の教育は、まさにリスク社会の中に組み込まれ、教育そのものが数々のリスクによって脅かされている。この20年間、教育をめぐる言説はことぼとく「危機」(crisis)によって語られ、その「危機」が過剰なまでに人々の不安や苛立ちを掻き立ててきたのは、教育がリスク社会の中に投げ入れられ、その内側に多くのリスクを抱え込んできたからに他ならない。


教育による社会移動の平等性は、もちろん神話である。しかし、この神話による「ギャンブル」は、産業化が急速に進展し進学率の急上昇が進行する限り有効に機能する。実際、1980年頃まで、ほとんどの国民は教育を受けることによって親の世代よりも高い教育経験を獲得し、親の社会的・経済的地位よりも高い地位を獲得した。「圧縮された近代化」は、教育を社会移動の「ギャンブル」として機能させ、たとえ幻想であれ「好機」をふんだんに提供することによって爆発的なエネルギーを生み出したのである。かつて日本の子供たちが世界一勤勉に学び、学校が絶対的な信頼を獲得し、教師が尊敬されたのは、教育による社会移動の神話が部分的であれ、現実化していたからである。
 しかし、産業化と教育の普及における「圧縮された近代化」が頂点に達すると、「ギャンブル」の様相は反転する。教育によって成功する者は一部に限られ、多くの者は転落を余儀なくされ、教育という「ギャンブル」は「好機」よりもむしろ「リスク」として経験されるようになる。その窒息感とルサンチマンが教育の危機お生み出す時代へと突入したのである。

「好機」から「リスク」へ
子どものリスクの最大の現われは、マナビからの逃走である。子供たちは小学校高学年ごろから、一部の学び続ける子供たちと、多数の学びから逃走する子供たちに二分されている。その結果、日本の子供の郊外の学習時間は世界で最低レベルに転落した。現在、中学生の約30%、高校生になると約40%の生徒の郊外の学習時間はゼロであり、月に1冊も本を読まない中学生、高校生は60%近くに達している。かつて世界一と評価された勉学の意欲は崩れ、学校生活は転落するりすくに満ちた場所となり、この現実に苛立ち不満を蓄積した親や市民による、学校と教師へのバッシングが続くようになる。学校神話の崩壊である(佐藤、2000)。
 もう一つのリスクの現われが若年労働市場の崩壊である。特に日本に老いては、グローバリゼーションによる産業主義社会からポスト産業主義社会への移行が、バブル経済崩壊と同時に進行したため、生産業の単純労働の需要が激減して若年労働市場を解体し、「フリーター」が大量に発生した。この変化は過激である。高卒求人数は、1992年には165万人であったが、2002年には15万人に激減し、わずか10年間に高卒者の労働市場の9割が消滅した。
 産業主義の時代の労働市場が一部の知的創造的労働と多数の単純労働で構成されるピラミッド型をとるのに対して、グローバリゼーションのもとでのポスト産業主義の労働市場は単純労働を海外の低賃金労働に追いやり、労働市場のピラミッドの底辺を突き崩してゆく。この事態に対応するためには、すべての子どもに高いレベルの教養教育を保障し、生涯にわたって学び続ける意志を育て、それを保障する教育システムを構築する必要があった。しかし、「学力低下」をめぐる議論と「基礎学力重視」の対策に見られるように、教育改革は逆行する政策をとり続け、教育によるリスクはいっそう拡大した。
 雇用政策の転換も、子供と若者のリスクを拡大している。1990年代に「日本型システム」を支えてきた終身雇用制度が崩壊し、雇用形態は、終身雇用、2006年の間の約10年間で、正社員は439万人減少し、非正社員が662万人増加している。若者の過半数は非正規社員であり、その賃金は正社員の約6割である。
 現在、高卒者の3分の1,大卒者の4分の1が就職3年後までに離職しているが、若年労働市場の流動化は正社員の労働の加重と非正社員の賃金の低下を引き起こしている。さらにフリーターの半数近くは週5日以上働いていることに留意する必要がある。雇用も教育も同様「勝ち組」と「負け組」を峻別する「ギャンブル」の様相を呈し、この「ギャンブル」においても、「好機」よりも「リスク」の賽の目がでる確率がはるかに高いのである。
 上記のような教育と雇用の変化によって、これまで「抑圧」と「搾取」によって阻害されてきた人々は、「抑圧」と「搾取」以上の疎外のポリティクスに組み込まれている。「包摂」(inclusion)と「排除」(exclusion)のポリティクスである。あるヨーロッパの社会哲学者は「抑圧と搾取によって虐げられたかつての労働者は人間としてみとめられていたぶんだけましであった。こんにち、社会から排除された人々は人間としての存在そのものを脅かされている」と指摘している。リスク社会における教育と雇用の「ギャンブル」は、人間としての尊厳を賭けた包摂と排除のサバイバル・ゲームとして展開されている。
(『リスク学入門C社会生活からみたリスク』第二章リスク社会の中の教育 佐藤学・39頁−41頁)



岡本治郎

プロフィール

青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻修了。修士(ビジネスロー)。

日本銀行・金融広報中央委員会の平成20年度通信講座「くらしに身近な金融講座」の改訂を依頼される。

会社役員。


資格など

日本証券業協会会員
内部管理責任者資格。

実用英語技能検定準一級。

趣味は、サイクリング。ギター。


政治は芸術だ
---参考資料---

自治体職員平均給与月額番付

自治体の公債費負担率

フューチャーセンターとは

川崎市会議員の報酬

市区町村長の給料

ポストシステム思考

幸福の定量化



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