女性に多い慢性関節リウマチは、自己免疫による病気である。本来、外敵に向かうはずの免疫機構が自分自身の体組織に対して攻撃を仕掛けるのが、自己免疫と呼ばれるものである。標的になった関節に痛みや腫れなどを発症する。炎症による損傷は修復されるが、それが繰り返されると正常な修復ができなくなり、関節の変形を招き、重度の場合は骨が溶け出してしまう。これが男性より女性に多いのは、もともと女性の方が免疫力が高いためである。妊娠中に胎児を保護するためだが、ウイルスへの防衛力が強ければ、自己免疫になったときのダメージもそれだけおおきくなる。慢性関節リウマチのほかにも、膠原病とか橋本病と呼ばれる甲状腺の病気や若年性糖尿病など自己免疫による病気は多い。
リウマチの痛みは関節の炎症によるものである。したがって炎症さえ抑えれば痛みはなくなる。医者がリウマチの治療にステロイドという消炎剤を使うのはそのためだが、ステロイドには、炎症を促進する微調整ホルモン・プロスタグランディンを作れなくさせる効果がある。だがステロイドが抑えるのは炎症だけではなく、微調整ホルモンを広範囲に抑え込んでしまうため、さまざまな副作用を起こす。ステロイドを長く続けた人は骨がもろくなることが多い。リウマチの痛みを取るために、こんな恐ろしい薬を使う必要はない。ステロイドは、副腎皮質で作られるホルモンである。インターフェロンと同様、体内で作られる物質は、外から注射するのではなく、必要に応じて自力で作れるようにしておくことが望ましい。そうしないと必ず副作用に苦しめられる。同時に、ホルモンを製造する器官はとくに”なまけもの”で、外から与えられると自らはその機能をすぐに停止してしまう。ステロイドを作る副腎皮質は、ほかの臓器よりもビタミンEやビタミンCを多く持っている。したがって、より多くのステロイドを自力で作らせるためには、ビタミンEやビタミンCを十分に摂るべきだろう。さらに、ビタミンAやB群も求められる。また炎症を起こした関節が痛みやすいのは、関節腔(かんせつくう)に活性酸素を除去する酵素がないためである。したがって、スカベンジャーを大量に摂取して活性酸素を除去すれば、炎症は鎮まり痛みは和らぐ。スカベンジャーを摂取するには、ビタミンEを患部に直に塗るのも効果的だろう。ビタミンEは脂溶性なので、皮膚から体内に染み込んでいく。
貧血とは、赤血球の中にあるヘモグロビンの量が不足している状態のことをいう。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を持っているので、これが足りなくなると組織の末端で酸欠状態が起こり、そのため顔色が悪くなったり、立ちくらみを起こしたりする。当然、どうやってヘモグロビンを増やすかが貧血対策のポイントになる。ヘモグロビンの材料は、グロビンというタンパク質とヘム鉄という鉄分である。ヘモグロビンという名前を見れば、この二つが欠かせないことは明らかだろう。確かに鉄分も必要な成分の一つだが、鉄分だけ与えてもヘモグロビンは増えない。ここでも必要なのは、まずタンパク質なのである。それ以外にも、ビタミンB6とB12、葉酸、ビタミンC、銅、ニコチン酸などが求められる。人間には一日に体重の1000分の1の良質なたんぱく質が必要である。それだけのタンパク質を確保するのは、普通の食事をしていても容易ではない。ダイエットで食事を減らせば、ますますタンパク質は不足してしまうことになる。
出産適齢期の女性の体は、女性ホルモンが体を守ってくれるため、男性よりも病気に対する抵抗力が強くなっている。更年期以降は、女性ホルモンが次第に減っていくため、さまざまな病気にかかりやすくなる。ただ、女性ホルモンの減少をできるだけ食い止める方法はある。更年期を過ぎると女性ホルモンを作っている卵巣が委縮するのだが、その代わりに副腎皮質で作られた男性ホルモンが女性ホルモンに変わるようになる。そしてその作業は脂肪組織で行われる。したがって脂肪組織が少ないと男性ホルモンが女性ホルモンに変わらない。ダイエットが体によくないのはどの年代も同じだが、特に中年を過ぎた女性は、あまり痩せすぎない方がいい。若い女性の場合も、皮下脂肪が少ないほど女性ホルモンの分泌が減ってしまう。女性ホルモンが少なければ、妊娠しにくくなるのは当然だ。たとえ妊娠しても、流産する危険性が高い。女性ホルモンが少ないと子宮の内膜が準備できず、着床したものが育ちにくいのである。女性ホルモンを正常に分泌させるためには、適度な皮下脂肪をつけるのに加えて、ビタミンEとビタミンCが必要になる。とくにビタミンEが不足していると、卵胞ホルモンが黄体ホルモンに変わらない。また、ビタミンAの働きも妊娠に深く関係していることが分かっている。子宮内膜症など生殖に関わるトラブルが増えているのは、ビタミン不足が大きな要因になっているのではないだろうか。
全身に大火傷(おおやけど)を負い、体中にケロイドができてしまった女性が、医者には「一生治らない」と宣告された。しかしケロイドの隙間にはわずかながら正常な皮膚も残っていて、夏になると汗が出てそれが痒くてたまらず、掻きむしってしまい、全身が血だらけになるという。ケロイドはできていても、おそらく皮膚の遺伝子そのものは壊れていないだろう。だとしたら、必要な「材料」を与えてやれば正常な皮膚が作られるはずだ。純粋に分子生物学の理論的な立場から、彼女のケロイドが「一生治らない」などということはありえないと判断したわけである。では、ケロイドの治療に必要な「材料」とは何か。それは良質なタンパク質とビタミンである。DNAという人体の設計図が壊れていなければ、与えられたタンパク質という「材料」が、DNAの指示通りの正常な皮膚に作りあげられるはずだ。またビタミンが必要なのは、それがタンパク質を作る上で補助的ではあるが重要な役割を果たすからである。「いずれ正常な皮膚が再生する」。良質タンパク質とタンパク質の体内利用をスムーズに働かせるのに必要なビタミン群、さらに皮膚が特に要求するビタミンAといった「材料」を彼女に与えた。既に14年間もケロイドに悩まされてきた彼女だが、タンパク質とビタミンの摂取を始めてからわずか二か月後に、皮膚が再生しつつある証拠が現れた。やがてケロイドも治りはじめ、半年たった頃には少し残しただけで殆ど回復した。