腰痛は若い人にも起こる。腰を支えている椎骨は、椎間板というクッションをあいだにはさんだ形でつながっており、それがずれないように筋肉で支えられている。その筋肉の力を超える負荷がかかったときに、椎骨がずれてぎっくり腰になるわけで、若い人の腰痛は骨の問題というよりも、筋肉の問題なのである。したがって、たいていの場合は、ぎっくり腰になって暫く寝ているうちに筋肉が回復して自然に治ってしまう。治りが遅かったり、何度も再発する場合は、筋肉を強くすることが必要となる。そのために欠かせないのは、まずタンパク質とビタミンEである。さらに筋肉の伸縮をスムーズにするためには、レシチンも十分に摂取したほうがいい。それに加えて、ビタミンB群を摂るように心がけ、腰に負担のかからないような姿勢を取るようにしていれば、若い人のぎっくり腰はほとんど治るはずである。
一方、中高年を過ぎてからの腰痛は、筋肉が弱ってくるのに加えて、骨そのものの変形が原因となっている。何十年も使ってきた椎間板が擦り減って、クッションが効かなくなるためである。したがって中高年の場合は、筋肉を強くするだけでなく、擦り減った椎間板を再生してやる必要がある。栄養面での対策は若い人とそう変わらない。求められる材料は、タンパク質とビタミンである。
マッサージをすると肩凝りが和らぐのは、乳酸が追い出され、固く縮こまった筋肉を緩めるからである。肩凝りに悩まされている人は、日常的にビタミンB1やB2やスカベンジャーを摂取して、筋肉を柔らかく保つように心がけてほしい。各種ビタミンの供給源となる食品をクリック。
肝炎ウイルスには、食べ物などによって経口的に感染するA型や、血液を通じて感染するB型やC型がある。感染すると免疫細胞が肝細胞に取りついたウイルスを攻撃し、炎症が起こる。それによって細胞が壊され、内部にあった酵素が血中へ漏れ出してくる。血液検査の項目にあるGOTやGPTは、その酵素の名前である。B型、C型の肝炎が慢性化し、細胞死が続くと、そのあとを埋める組織ができて、硬く変化していく。風邪のウイルスについて説明した時に、体内でインターフェロンという物質が作られていると述べたが、多くの人は体内で作られるものだとは知らず、薬品の名前だと思っていたのではないだろうか。インターフェロンの名前が広く知られるようになったのは、それがC型肝炎の特効薬として注目されたためである。しかしアメリカでは効果があったものの、日本では、最初は効いたように見えるのだが、暫くするとウイルスが力を盛り返してきて、効果がなく、驚くほどさまざまな副作用だけはあり、有害物質を注射しているようなものであった。
もちろん体内で作られたインターフェロンには「副作用」などない。したがって、ウイルスを撃退するためには、タンパク質やビタミンを積極的に摂取して、自分自身でインターフェロンを十分に作れるようにするべきなのである。C型肝炎のウイルスは繁殖力が極めて強いから、最初はインターフェロンの注射の力を借りるのもいいだろう。注射によって一時的にウイルスを抑えておいて、その間に少しづつ自分自身の免疫力を高めていけばいい。それでも簡単にはC型肝炎は克服できないであろうが、少なくともインターフェロンを注射し続けるよりはましである。いつまでも注射に頼っていたのでは、副作用が起きる上に症状がどんどん悪化してしまう。
ウイルスを抑え込むためには、まずビタミンCの血中濃度を高めてインターフェロンを作りやすいようにしておかなければいけない。タンパク質やビタミンAも必要となる。また、肝炎に対しては、グルタチオンという物質が有効であることが分かっている。これは生体が作るスカベンジャー(活性酸素を退治する物質)の一種だ。グルタチオンを体内合成するためには、含硫アミノ酸が必要で、鶏卵やウズラの卵に多く含まれている。
グルタチオンの効果が明らかになったのは、養殖ハマチの大量死がきっかけで、死因を調べてみると、魚の肝臓が壊死していた。そこでグルタチオンを大量に与えたところ、魚の肝機能検査値(GOTとGPT)が下がって、肝炎が減少したのである。肝炎魚に投与されたグルタチオンは、体重一キロあたり一グラムの量だった。ところが厚生省は、このグルタチオンの使用を制限している。体重60キロの人間に、わずか200~300ミリグラムしか使用を認めない。これでは肝炎の治療に必要な量には到底満たない。肝炎の専門医の中には、こうした制限に疑問を抱いている人が少なくない。
O-157は、牛や羊などの腸内にいる大腸菌で、肉や内臓を介して人間に感染する。口から入った菌は、胃酸によって殺されるのがふつうだが、O-157は酸に強く腸まで到達し、腸壁に付着する。そこでベロ毒素という毒物を分泌して、出血や潰瘍を起こさせるのである。但し、O-157が体内に入れば必ず被害を受けるというわけではない。まず量の問題があると思われる。また個体差に左右される部分も大きい。腸管内には、粘液に分泌された抗体が、異物や病原体の侵入を阻もうとして待ち構えている。その抗体づくりに、遺伝的な弱点があるケースが考えられる。しかし、基本的には、やはりこれも栄養の問題なのである。毒であれウイルスであれ、体にはもともと異物を取り除こうとする力が備わっている。その力が十分に発揮できるような環境を、正しい栄養によって作ることを心掛けるべきである。
膝でも肘でも、すべての関節は骨と骨が向き合った形になっている。曲がるときには骨同士が擦れ合うから、接触する部分にカバーが必要となる。そのカバーは軟骨でできているのだが、長く関節を使っているとそれが擦り減ってくる。だから歳を取ると、骨同士が直接ぶつかるようになって骨が変形し、神経を圧迫するのである。したがって、関節痛を治すには、すり切れたカバーを補修してやる必要がある。つまり関節を覆っている軟骨を再生させるわけだ。何十年もかけて擦り減ってきたものだから再生にも時間がかかるが、必要な材料さえ十分に与えてやれば必ず効果は出る。
それでは、軟骨を作るには何が必要か。おそらく「カルシウム」と答える人が多いだろう。しかし残念ながら、この骨に関する知識は極めて中途半端なものと言わざるをえない。骨が成長するためには、骨の端にまず軟骨ができ、それにカルシウムが沈着して硬骨になる。軟骨はコラーゲンというタンパク質を心棒にして、プロテオグリカンという糖タンパクを詰め込んで作られている。硬骨は、これにグラタンパクというタンパク質の接着剤でカルシウムを塗りこめて作りあげる。軟骨も硬骨も、まず最初にタンパク質がなければ、形にならない。コラーゲンを作るにはビタミンA、グラタンパクを作るにはビタミンKが動員される。これだけお膳立てが整ったうえで、ようやくカルシウムの出番となる。ビタミンKは、ブロッコリーやピーマン、ワカメなどにもあるが、納豆に圧倒的に多い。
欧米に比べると、日本の方が腰の曲がったお年寄りが多い。これは明らかに、カルシウムではなく、タンパク質の不足が原因である。年をとってからの腰痛は、骨粗しょう症の始まりとも言われている。予防手段としてカルシウムの摂取が促されている。しかしそれだけでは十分とはいえない。やはり骨作りの土台となるタンパク質をきちんと摂ることが求められるのである。