高尿酸血症という成人病がある。耳慣れない病名だが、痛風のこと。その名のとおり、この病気にかかった患者は血液中の尿酸値が高い。しかし、尿酸値の高い人がすべて痛風になるわけでもなく、放っておいても痛風にならない人もいる。尿酸そのものは、決して有害な物質ではない。むしろ血中ではスカベンジャーとして働く大切な物質である。尿酸値が高くても痛風にならない人がいるのはなぜか。
血中の尿酸値が高くなると、尿酸がナトリウムと結合して針状の結晶になる。これが周囲の組織を傷つけて、その部分が炎症を起こすのである。この針状結晶ができなければ、尿酸値が高くても痛風にはならないことになる。そこでカギを握っているのが、糖タンパク(糖とタンパク質の複合体)だ。近くに糖タンパクがあると尿酸はそちらと結合する。そのためナトリウムとは結晶化せず、痛風にならないのである。ならば、痛風の予防策は尿酸値を下げることではなく、尿酸値はそのままでも、体内で十分に糖タンパクを作れるようにしてやればいいわけである。そこで必要なのは、まずタンパク質。さらに糖を作るためにはビタミンAが欠かせない。この二つを食事から摂取することで、痛風は自力で克服できる。
尿酸値が高くなる人には、体内で尿酸を過剰に作ってしまうタイプと、余った尿酸を腎臓から排泄できないタイプとがある。いずれにしも一時的なものではなく、体質的な問題だ。従って、薬で尿酸値を下げても根本的な解決にはならない。いつまでも薬の世話になりたくなかったら、体が持っている本来の機能を活かすような栄養を摂取する以外にない。
お酒の飲みすぎは、脂肪肝や肝炎の病気と深く関わっている。脂肪肝とは、肝臓の細胞に必要以上の脂肪が蓄積された状態のことで、これを放っておくとアルコール性肝炎を招くことがあり、さらに肝硬変を惹き起こす。したがって、深刻な病気を避けるには、脂肪肝の段階で手を打っておくべきだろう。肝臓は、ビタミンやグリコーゲンなど、いろいろな物質を溜める働きをする臓器であるが、脂肪は溜めないようにできている。作られた脂肪は、コレステロールを含むリボタンパクとともに運び出される仕組みになっている。脂肪肝になるのは、その仕組みがうまく働かなくなるためである。リボタンパクを運び出す能力は、あらかじめ遺伝的に決まっている。脂肪の量がその能力に見合ったものなら、肝臓に脂肪が残ることはない。ところが何かのきっかけで、脂肪を合成する働きが、運びだす能力を上回ってしまうことがある。そこで余った脂肪が肝臓に溜まり始めるわけだ。とくにアルコールを代謝するとき、そういう状態になりやすい。アルコールを断てば、二週間ほどで肝臓は元の状態に戻る。しかし脂肪肝を解決する方法は断酒だけではない。必要な栄養を十分に摂っていれば、肝臓を正常に機能させることができる。
その栄養とは、ビタミンB群に属するコリンとイノシトールという二つの抗脂肪肝因子で、これはレシチンにも含まれている。またアルコールを代謝するときにニコチン酸というビタミンが消費される。したがって、脂肪肝が気になる酒飲みは、ビタミンB群やレシチンを多く含んだ豚肉、豆類、チーズなどのツマミを食べながらお酒を飲むといい。
風邪はウイルス感染症の一つである。寒いと風邪をひきやすくなるのは、風邪のウイルスが寒くて乾燥したところに好んで棲息するのに加えて、気温が下がると血管が縮み、免疫細胞の数が減るためである。従って、免疫細胞が減らないような手だてを講じておけば、寒くても風邪をひかなくて済む。ウイルスに対抗するために必要な物質は、インターフェロンという糖タンパクである。ウイルスが体内の細胞に侵入してくると、インターフェロンが分泌される。これが周囲の細胞に対する警戒信号になって、体がウイルスの増殖を抑える物質を作り始める。このインターフェロンを欠かさなければ、風邪のウイルスを撃退することができる。インターフェロンを作るためには、タンパク質とビタミンCが必要になる。これらの栄養をきちんと食品から摂取していれば、医者に行くことはない。
また、インターフェロンは温度が高い方が作りやすい。鼻粘膜などから冷たい空気を吸っていると、インターフェロンを生産するスピードが落ちてしまう。だから風邪をひいたときは体を温めた方がいい。とくに頭部は洋服や布団から外に出ているから、冷たくなりやすい。それを防ぐためには、脳に通じる太い血管が走っている首から背中にかけた部分を温めてやるのが有効だ。
発熱は代謝レベルをあげるから、ひどく体力を消耗させる。だから、薬を使ってでも何とか下げたい気持ちも分からないではない。しかし発熱によって代謝レベルを上げるのは、白血球を増やしてウイルスと戦うためである。確かに発熱は異常な状態だが、それは人体が風邪という非常事態に対処するための正しい反応である。また、発熱は「安静にしていろ」という体からの警告だと考えることもできる。熱が上がれば、誰でも動きたくなくなるものだ。食欲もなくなる。これはいずれも、体が余計なエネルギーを消耗しないようにコントロールしているのだと思えばいい。体を動かすことはもちろん、消化や吸収も多大なエネルギーを使う作業である。そういう活動を一時的に休止して、ウイルスとの戦いに全力を傾けるために、体は熱を出すのである。したがって解熱剤によって無理やり熱を下げるのは、そういった体の正しい反応を邪魔することになりかねない。
解熱剤と同様、抗生物質も風邪をひくとかならず医者から与えられる。抗生物質は、効き目のうすい薬を連用すれば、副作用だけ際立ってくる。抗生物質を使っていると、腸内細菌が死んでしまい、おなかの調子が悪くなる。抗生物質を服用するときには、なるべく腸内細菌の餌になる食物繊維(特に水溶性のもの)を摂取するといい。効き目があるかどうか分からない薬を飲むよりは、もともと自分の体が持っている抵抗力を十分に発揮できるような環境を作るべきである。そのためには、まず安静にすること。抗生物質を使うのは、熱が上がりすぎてよほど辛くなったときだけにしたほうがいい。
かぜ症候群の中で最も症状が重いのは、インフルエンザである。インフルエンザのウイルスは圧倒的にタチが悪い。なぜタチが悪いかというと、すぐに抗原を変えてしまうためである。そのため、対抗手段であるワクチンを作ろうと思っても、後手に回ってしまう。流行しているウイルスの正体を突き止めてワクチンを作ったときには、すでに相当の感染者が発生していることになる。普通感冒のウイルスのようなありふれたウイルスであれば、体の免疫システムがすでに抗体を用意している。ところが新型インフルエンザの場合は、体内に新しいウイルスだから、すぐに対応して抗体を作ることができない。抗体ができるまでの間は、間に合わせに白血球の一種である好中球でウイルスと闘うしかなく、そのため体内には大量の活性酸素が発生する。この活性酸素により臓器がダメージを与えられる。ここで最も重要なのはスカベンジャーの摂取による活性酸素対策である。まずはインフルエンザ・ウイルスに感染しないよう、外から帰ったらうがいをしたり、手を洗ったりという予防策を講じるべきだろう。
アレルギーとは、免疫システムの異常によって惹き起こされるものである。通常、免疫はウイルスや細菌に対する防衛力として働いており、いつも食べたり触れたりするようなものに対しては働かないようになっている。これを「免疫寛容」と言う。つまり人体に害をもたらさないものは防衛する必要がないから、免疫システムによって攻撃されないよう「許されて」いるのである。花粉は、季節が来ればかならず空中に撒き散らされるものだから、人間はそれに触れずにはいられない。しかも人体に害を及ぼすものではないから、ふつう、免疫寛容の対象になる。ところが花粉症にかかった人の免疫システムは、それを許さない。花粉を害のある異物と認識して、防御力を発揮してしまう。このように免疫が過剰に働いてしまう状態を「閾値(いきち)が低い状態」と言う。花粉症の人は、花粉に対する閾値が低い。したがって対策としては、その閾値をあげてやればいいことになる。そのために必要なのは、タンパク質とビタミンAである。抗体にはA、D、M、G、Eのご種類のタイプがあり、花粉症のようなアレルギー疾患は、Eタイプの抗体を作りやすい人に発症することがわかっている。抗体Eはかっては寄生虫をターゲットにする役割を受け持っていたといわれている。ところが環境が改善されて寄生虫が減ったために、その抗体には「敵」がいなくなった。ならば抗体そのものを作らなければいいのだが、相変わらずその能力を維持している人がいる。すると、やるべき仕事のない抗体は、寄生虫の代わりにハウスダストや花粉などを「敵」とみなして攻撃するようになるのである。
体内には、炎症を起こす物質を蓄えたマスト細胞というものがある。異物が入り込んだことを察知すると、抗体はそのマスト細胞にくっついて刺激を与え、起炎物質を放出させる。その働きで中心的な役割を果たすのが、ヒスタミンという物質である。そのため、「アレルギーには抗ヒスタミン剤」というのが常識になっている。ただし、ヒスタミンは脳内では必要な情報伝達物質でもあるから、全部を力ずくで抑え込むのは問題だろう。薬に頼るよりは、栄養によって余計な働きを自然に抑えたほうがいい。そこで働いてくれるのがビタミンCである。ビタミンCは、マスト細胞の中でヒスタミンが作られるのを抑制し、細胞の外へ出て来たヒスタミンの働きも失わせる。免疫のハードルを上げるためのビタミンAと、ヒスタミンを抑えるビタミンC。さらに炎症を起こした部分に発生する活性酸素対策としてのスカベンジャー。この三本柱が、花粉症をはじめとするアレルギーの基本対策となる。
また近年の研究によれば、ビタミンH(ビオチン)にも抗アレルギー作用があると言われている。これはとくに卵の黄身に多く含まれているビタミンである。黄身の他に、オートミール、大豆、えんどう豆、落花生、鶏肉、豚肉、バナナなどにも含まれている。またイチョウの緑葉エキスも注目されている。もともと黄色くなる寸前のイチョウの葉にはフラボノイドと言う成分が豊富に含まれていて、血管や血液の働きを正常に保つ効果があり、血液循環障害に有効だとされている。またテルペノイドという成分も含まれており、これは抗アレルギー作用を持っている。さらにこれらの成分は活性酸素を除去する働きもある。